movie_99’s diary

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【映画レビュー】『オリエント急行殺人事件』

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ケネス・ブラナーという作家は最早リブート作家と言ってもいいように思える。「エージェントライアン」でジャックライアンシリーズを復活させ、「シンデレラ」であの誰もが知ってる古典的クラシックを恥ずかしげもなく、忠実すぎるほどに映画化した。その脇で人気シリーズ「マイティソー」の第1作目の監督としても名を馳せる。幅広いジャンルと、物語を差別しない企画選びで、出演作と同時に、かなり多作な監督作を残してきた。そんな彼が今回挑んだ、アガサクリスティーの「オリエント急行殺人事件」はその中でも、完璧な映画ではないが成功した作品だと言えるだろう。

 

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何度も映像化されたこの物語であるが、今回は、企画の時点で出すことなんてできないオリジナリティへのもがきというか、最低限の、この映画ならではの見せ方、演出や脚色をしてるのがかなり好感。例えば、今回の正に監督本人が演じるエルキュールポワロという人物。このキャラクターがかなり大胆に脚色されているのだが、これにより、元々このお話にあったギリギリの倫理感、グレーなゾーンに、最低限の説得力を与えている。個人的にもこの部分は元々のお話でかなり納得しづらい部分であったので、とても良かった。それから、ポワロ一同が初めて死体を発見する場面。敢えて死体を直ぐに映さず、俯瞰ショットにカメラワークが変わる。ここの工夫ひとつで、殺人という罪の重さ、人の死のショッキングさが強調される。さらに、CGを使って背景やセットを出来るだけ豪華にすることで、この映画のリッチさ、スケール感にも繋がっている。汽車のダイナミズムも素晴らしかった。

 

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そして何よりも特筆したいのが、本作におけるジョニー・デップの使い方のうまさと素晴らしさだ。勿論、ティム・バートン作品を筆頭に最近ではすっかりコスプレキャラかジャックスパロウのイメージがどうしてもついてしまっているのは言わずもがな。だが、古くは「ギルバートグレイプ」や「エドウッド」で(これもティム・バートン作品だが)の名演や、近年でも「ブラックスキャンダル」の主演で、演技派でもあることを証明したばかりだ。そんな彼が今回は前半でしか完全には出てこない役所ではあるが、これがとても良かった。彼のダーティーな笑いや、会話の間など、彼の演技でかなり前半は引っ張られてたところがあったように思える。ミシェル・ファイファージュディ・デンチなど、インパクトのある大御所に囲まれながら、少ない時間でこれほどのインパクトを残せたのは彼だけであっただろう。

 

一応不満点も上げておくと、人種の問題などを現代的にさらっと上げてくるのはいいが、そのおかげで、キャラクターの描き方に明らかバランスが偏ってしまっていたように思える。ペネロペ・クルス演じる宣教師は、今作オリジナルのキャラクター(正確に言うと他のポワロシリーズの登場人物から引っ張ってきたキャラクター)なのだが、彼女が本当に必要だったのか、そしてペネロペ・クルスが演じる必要があったのかは疑問ではあった。ここだけが惜しかった。

だが、エンドロールにミシェル・ファイファーが歌う「Never Forgot」で少しウルっときてしまう。これは全体を通して、消されない罪と赦しの話であったと。この辺りが、今回かろうじてギリギリの部分で、この映画のオリエント急行殺人事件に存在価値を与えてる部分であると思う。誠実な演出と改変ではない脚色で、見事勝利した秀作。