movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【映画レビュー】『RAW 少女のめざめ』

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2年前ほどにカンヌで話題になった本作だが、とても面白かったと同時に、一年周期ぐらいで、音楽も含め、ムーブメントやトレンドが変わる今の時代、これが2年前の映画とはとても思えない、2018年の映画の風格が凄まじい映画であった。

 

近年ホラーのトレンドである、青春要素、アート系の要素と、押さえるとこはしっかり抑え、その中でもフランス映画特有の艶かしさと、カニバリズムのグロテスクホラーとしても優秀という、様々な要素が、いい形でブレンドされている印象だ。内容自体はとてもデリケートで危ういのだが、映画のつくりとしてはとても安心できるつくりだった。

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 演出はどれも絶品だったが、特にサウンドミキシングは素晴らしかった。「音」だけで画面を演出するのはとても難しく、字面だけだとミュージックビデオのような感じかと印象づくが、今作は音の厚みと音量で攻めていくつくり。この音響調整だけで、主人公の快楽、怒り、圧迫感全てを表しているのがレベルの高い技術だった。この「音」を聞けるだけでもこの映画を映画館で見る価値は大いにあると言えるだろう。

 

勿論、その他の演出も。カニバリズムものだからといって、カラーリングを一定に赤にするようなつまらないことをこの映画はしない。全体のルックはとても計算されていて、カラーリングだけでなく、人物の位置一つにもこだわりが見える。

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 登場人物が送る青春はあまりに残酷だ。それはカニバリズムという特殊な要素を抜いたとしても、三角関係、姉妹の物語としてかなり苦い後味となっている。この物語に決定的に訪れてしまうある出来事が起こるクライマックス周りの演出が凄まじい。性に目覚めていく妹と、行くところまで行ってしまう姉。2人の関係を決定付けてしまうショッキングな出来事が、見せ方から何まで優れている。シャワーを浴びるという行為一つとっても意味の違いに感動を覚える。そこからのあのオチだ。ラストカットに映されるものの絶望と煉獄感。ここで主人公のそもそものベジタリアンという設定が重要になってくる。実は自分もどうにも抜け出せないサイクルの中にいたのだと。後味の悪さも絶妙であった。

 

唯一苦言を言うなら、公開が遅すぎたこと。中々難しい題材と内容で公開されたのも嬉しいことではあるが、この最新型のホラーをリアルタイムで味わいたいというのが本音だ。まさに未来の映画であった。