movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【映画レビュー】『リバーズ・エッジ』

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自分はほんとに漫画を読まない。読んだとしても、映画か何かしらの原作で、あくまで映像作品の補完として読む程度だ。それは勿論、岡崎京子の90年代の伝説的コミック「リバーズ・エッジ」も例外ではない。熱狂的なファンが大勢いる今回の原作だが、自分は今までこのお話に触れてこなかったので、コミックの存在を知っても読まずに、敢えて真っさらな状態で映画に臨んで見た。以下はそういう人間の評だと思って読み進めてもらいたい。

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まず、自分がこの作品を近年の行定勲映画の中で一番良かったと感じている理由が二つある。まず1つは90年代という時代に対する誠実な描き方。何もその時代の象徴的な文化やアイテムを散りばめることをせず、しかし、あくまで90年代の空気感の中でしか存在しえない若者たちを演出していた。この映画の補完のために読んだ、よしもとよしとものネット記事インタビューに「ぼくらは生きながら死んでる」というのが時代を代表した表現として挙げられてたが、まさにこのような考え方と、空気感に満ちている、病んだ90年代を薄っぺらくなく表現できていたと思う。

 

そして、もう一つの理由は二階堂ふみだ。上に「近年の行定勲映画」と書いたが、実はそう書くのも憚れるほど、この作品は二階堂ふみの映画になっているのだ。それは主演女優として体を張って熱演したという意味も勿論あるのだがそれだけではない。調べたところによると、今回の映画化は、元々原作のファンだったらしく、企画からキャスティングに至るまでのかなりの要素に二階堂ふみが関わっていたとのことだ。現に、ここに出てる若手俳優の数人は二階堂ふみに引っ張られてきたとのこと。つまり二階堂ふみの座組みな訳だ。これが、例えばハリウッドであれば今の時代そう珍しくもないのだが、日本映画でここまで役者が率先して、製作過程まで全部をフックアップしている映画はかなり珍しいと思う。この、誠実かつ熱意ある彼女の仕事が、作品としての質をかなりあげると同時に、行定監督の今までの作品に見る欠点をかなり抑えてるのではないかと考える。

 

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個人的な印象だが、行定勲監督は役者の芝居付があまり上手くないと思う。自分は勿論役者じゃないので、演技についてベラベラと語るのも気がひけるが、それはこれまでの作品を見てて純粋に演出とシーンのトーンに対する演技の違和感はかなり感じていたし、近年の「ピンクとグレー」がそれを決定的にしたと考えている。しかし、今回はあくまで元々自分の個性や演技感覚を持っている人たちが二階堂ふみの呼びかけによって集まっているので、そこがかなり抑えられ中和されていた印象がある。しかし、逆にいうと、脇の方の人たちはかなりあざとく、なんなら所謂臭い芝居をしている人も混ざっていて、その、主要組と行定組の演技バランスの差はすごく感じた。バラツキがあるというのが正直なところだ。

 

あと、行定勲監督のあざとい演出も若干残っていた。例えば美術室でのセックスを覗き見している人にソーセージを食わせるなど、すごくあざとく露骨な演出に少々萎えてしまったのも事実。インタビューが入る実験的なつくりは、今の時代からあの頃の時代の若者を観察している感じがあって面白かったのだが、画面サイズに関しては「ピンクとグレー」のモノクロ同様、あまり効果を発揮してないと思った。この辺りは明らかに欠点の部分であろう。

 

しかし、この映画にもう一つ素晴らしい点があるとするならば、それはラスト。この映画の全てを託された小沢健二が歌う「アルペジオ」が流れる中、下に汚れていく川、上にUFO、そしてその間に映す2人の背中という、最高の位置関係と、タイミングで幕が降りる。この映画で描かれた絶望も希望も、そしてその間に挟まれた人間も優しく包み込む「アルペジオ」が本当に素晴らしく、心に響くラストだった。小沢健二二階堂ふみがこの映画のヒーローであろう。