movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【映画レビュー】『ルイの9番目の人生』

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ルックとタイトルだけ見ると、なんともティム・バートンが撮りそうなダークファンタジーの香りがするが、監督は全く違うタイプのアレクサンドル・アジャ。若手ホラー作家の未来として一時期とても注目されていたが、もうすっかり職人監督化している。たしかに初期の「ヒルズハブアイズ」(ウェス・クレイヴンの初期の作品「サランドラ」の実質リメイク作品)や、「ピラニア3D」は独自のオリジナリティとフレッシュなアイディアが兼ね備わった傑作であると思う。しかし、そのほかの監督作品に関しては、実は個人的にあまり評価をしていない。前作「ホーンズ 容疑者と告白の角」ですら、ダニエル・ラドクリフの怪演は楽しかったが、なんとなくなスティーブン・キング的なジュブナイル要素と、安易なピクシーズの「where is my mind」の使い方(この曲は「ファイトクラブ」が好きというのを抜いても、ピクシーズの曲で五本の指に入るほどお気に入り)に萎えていた記憶がある。よって、今回も期待半分、不安半分くらいの気持ちで臨んだが、結論はアジャ作品でもかなり面白い部類に入る作品であった。

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 所謂ミステリーであり、こういう大どんでん返しと言われる構造を持つ作品は、そこ一発で攻め過ぎていて、脚本のテーマよりも先に驚かせるという目的に向かっていってしまいがちな映画が数あるなかで、今作はあくまでも、普遍的なテーマを掘り下げるということを目的として、その一つの手段として、トリッキーな展開を採用してるのがとても好感を持った(おそらく原作由来の部分ではあるが)。自分なりに解釈すると、要は他者性の話であり、人の外見によって植えつけられる、イメージや印象がどんなに脆くて危ういものかを描いてる物語であると思った。それを子供という純粋な視点から、対大人という話に落とし込んでいく、ある種の大人という生き物を観察した作品でもあり、とてもダークで残酷な寓話でもある。後味としては、実は元々のグリム童話などにかなり近い感覚を覚えた。

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 物語自体が個人的には非常に好みな感じではあったのだが、アレクサンドル・アジャのホラー映画で培った演出のセンスも十分発揮されていたと思う。ルイの案内役となる怪物の造形や、病室の照明の暗部の凝りなどもありつつ、主人公の医師と母親のキスをルイが目撃してしまうショットは最高であった。それまで大人の主観で見せてくこのシークエンスは、それまで自分が監視下に置いていたルイに逆に見られてるという、視点のスリリングさを味わえ、且つルイの起き上がってるショットの照明や撮影の奥行きと引きのカメラで、とても恐ろしくも情報量の多いシークエンスに仕上がっている。個人的にこのくだりはお気に入りのシークエンスであった。

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 実は見終わってみるとわかるのだが、この物語は別にファンタジー的に語られなくても、なんなら大人の視点一点から語られても成り立つくらいには地に足のついた話である。しかし、それでもこの「子供の視点」が重要であるのは、寓話性を高めるのも勿論だが、より他者の内部の意外性、それを見据えテーマとして一本筋を通して語るためであろう。そこが例えば「パンズラビリンス」のファンタジー性とは違うところである。大人のダークサイドを覗き見るという意味でも、より多角的な視点を持ち、そこを意外性として見せながらも、普遍的な苦さと寓話性を持つ物語として描ききる。思いの外楽しめる映画であった。ただ、アレクサンドル・アジャには次回はまたがっつりしたホラーを撮って欲しいが。