movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【映画レビュー】『リメンバー・ミー』

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ピクサーはカールじいさんが風船で空を飛んでから以来、一歩大人向きな作風になった印象だ。その要因はいろいろあるが、一番は「死」というものを作品内で感じさせるようになったからだろう。そう考えても「カールじいさんの空飛ぶ家」は相当ダークな映画であった。ピクサー映画で血と銃が出てきて、作品内で人も事実上かなり死んでいる。「カールじいさんの空飛ぶ家」が全編にわたって語るのは正に「死」と「思い出」だ。それを残酷に、しかし生きていく上で誰でも避けられないものとして描いている。誰にでも死は訪れ、そして思い出へと変化していくのだ。そして、今回の「リメンバー・ミー」も正にそんな映画であった。

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監督のリー・アンクリッチの前作「トイストーリー3」でもその死の香りはクライマックスに。あのクライマックスの焼却炉にはたしかに死があった。今回は正にその「死」こそがテーマだ。なんせ物語の舞台はメキシコの死者の日。「007 スペクター」の冒頭に出てきたあれだ。この死者の日の亡くなった人に関する考えが、言ってみれば、日本のお盆などとほぼ一緒なのである。その日だけ死者は家族のもとへ帰省する。そのことが今回は物語上大きな仕掛けであり、軸になっている。

死者が最も恐れること。それは生者に忘れ去られてしまうということだ。思えば近年のピクサー作品の登場人物は、誰かに忘れ去られないように必死にもがいていた。それは「トイストーリー3」のおもちゃたちであり、「インサイドヘッド」のビンボンであり。忘れられる=死という映画だった。今作も、現世から去る死と忘れ去られる死の二段階がある。実は近年のピクサーが提示してきた価値観であり、「死」というものへの考え方が、一貫されているのである。

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この映画、実は物語が進むにつれて非常にミニマムにまとまっていく映画なのだが、寧ろだからこそ散りばめられるメタファーと伏線は盛りだくさんだ。特に、この映画もまた現在のアメリカの流れにある多様性のお話となっている。あの家族の音楽への価値観を、宗教に変えて見たらどうであろう。全然現実で通じる話だし、現にこの間も「ビッグシック ぼくたちの大いなる目覚め」がやっていた(ビッグシックとはかなり共通項の多い作品だと思う)。この現代的な側面が説教くさくなく、全面にわかりやすく描写できるのもこの物語のミニマムさとまとまりやすさ故だろう。この辺りの主張もとてもスマートなのだ。一枚の写真を巡っていくという話運びもとてもわかりやすく面白いあたりだ。

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予告編でも何度も聞かされた「リメンバー・ミー」という曲。どういう曲か分かってるはずなのに、ラストの使い方には号泣させられた。

Remember me 

僕のことを覚えていて

Though I have to travel far 

遠くに旅に出なければならないけど

Remember me  

僕のことを覚えていて

Each time you hear a sad guitar 

悲しいギターの歌を聴くたびに

Know that I’m with you the only way that I can be 

僕は君と一緒にいることを知っておいて

Until you’re in my arms again 

君をもう一度僕の腕で抱きしめるまで

Remember me 

僕のことを覚えていて

これが誰に向けて作られた曲か。後から思い出すと味わい深い。実は大切な人のもとに帰れなかった男が、もう一度帰る話でもあるのだ。正にレクイエムという言葉がふさわしいこの曲が、歌われるべき人にやっと歌われたあの瞬間は、この映画でも特別な時間だろう。まんまと「リメンバー・ミー」に泣かされたのだ。