movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【映画レビュー】『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

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試写で鑑賞。実話、伝記もののこのようなタイプの映画は数多くある。言ってみれば、アカデミー賞が好みそうな作品という言い方ができるような作品群だ。そんな中でも、イギリスの伝説的首相、ウィンストン・チャーチルを描いた今作は、比較的コンパクトかつ分かりやすく、入り込みやすい内容となっていた。

 

まず、この作品が描く期間だ。伝記ものとなると、その人の人間性を描くのに、その人の人生を描くという方法をとりがちだが、今作は、1940年の5月という限られた短い期間に限定されている。そこがこの映画のテンポの良さと、ギアの軽さに繋がっている。個人的に、この構成を見てダニー・ボイルの「スティーブ・ジョブス」以降の伝記物という感じはしたが。その人の人生で描く部分を最小限にした上で、その人の人間性がわかる細かい描写やエピソードを積み重ねていく。さらに、今回はダンケルクでの救出作戦の裏側という、とても分かりやすい「題材」があるので、滅法見やすい作りになっている。去年、その救出作戦を戦場の視点から見た作品として、クリストファー・ノーランの「ダンケルク」があったおかげで、裏ダンケルクとも言われていたが(両作品ともオスカーにノミネートされたのも面白い話だ )。歴史的背景と人間的背景を両方描き切ることに成功している。

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撮影も良かった。ティム・バートン作品の「ダークシャドウ」や「ビッグアイズ」、コーエン兄弟の「インサイドルーウィンデイヴィス 名もなき男の歌」などを手がけた撮影監督ブリュノ・デルボネルが手がける、全編灰色の、薄黒い雰囲気がとても良く、しかしその中でもふと光を当てたり、白の部分をどう広げるかなどの明るい場面もとても考え抜かれた撮影をしていた。そして何と言っても監督のジョー・ライトだ。割と幅広いジャンルの作品を送り出してきた中で、流石「つぐない」や「プライドと偏見」という文学的なヒューマンドラマを手堅く作ってきた。そんな彼が、今回の伝記もので、従来の型を脱して、コンパクト性を重視した作りなのは少々驚いた。「PAN ネバーランド、夢の始まり」のときの語りの手さばきの悪さとは大違いだ。

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だが、やはりこれはゲイリー・オールドマンの映画だろう。辻一弘のメイクで一見、面影も無くなった見た目ながらも、実際に見てみると「レオン」の頃からの蓄積が見える、ゲイリー・オールドマンらしい怒りと弱さが見え隠れする演技だった。そのおかげで脇の人たちの存在感がかなり薄くなっているのは否めないし(そうは言ってもクリステン・スコット・トーマスは相変わらずうまい)、もう少し大仰な音楽を抑えられなかったのかとも思ったが、彼のパフォーマンスを見るだけでも料金分の価値はある映画になっている。