movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【映画レビュー】『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

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素晴らしかった。これを見ると、思えばスピルバーグは、デビュー作「激突」の頃から”見えない敵との戦い”を描いてきたと感じる。今作でもそれは、冒頭のベトナムでの銃撃戦で敵兵の姿を一切映さない演出から一貫されている。今作の「敵」であるニクソンも後ろ姿と肉声でしか現れない。今作はまさに、スピルバーグ的な「敵」を隠すという演出を、近年でもトップクラスに徹底してると同時に、ここから既に、従来のスピルバーグ映画的、スペクタクルな興奮を味わえると言える。

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一方で今作はとにかく、スピルバーグ組のスタッフワークが異常な成果を発揮しているように思える。一つにはヤヌス・カミンスキーの撮影。彼の近年の仕事でもベストなんじゃないかと思う。人物を捉えるショット、光の入れ方、カメラワーク。どこをとっても絶品のショットだらけだった。例えば、ボブ・オデンカーク演じる彼が公衆電話で話すというシーン。毎回そのシーンに入る時に、彼を小さく見せる引きのショットを入れ、何かデカイものに進んでいっていることを表している。こういうところの巧さが流石なのだ。そしてジョン・ウィリアムスのスコアである。前作「BFG」の衰えたサウンドと比べても、数億倍生き生きしていて躍動感のあるスコアだった。ここが本当に嬉しかった。このようなスピルバーグ組のスタッフワーク力が今回は最高に発揮された結果であると思う。最高の人たちが最高に仕事をしたらこれが出来上がるのだ。

そして、その最高の演出で彩られたシーンの内側にいてムードを形成する役者陣も素晴らしい。メリル・ストリープは近年のベストアクトだろう。マーガレット・サッチャー役をやったときよりも個人的には数倍良かった。トム・ハンクスは少し声の作り方がやりすぎな気もしたが。海外ドラマ組の役者陣もみんな芸達者で、ボブ・オデンカーク、アリソン・ブリーサラ・ポールソンジェシー・プレモンスとそれぞれが申し分ないパフォーマンスを披露していた。このキャスティングだけでもNetflixをはじめとするストリーミング加入者はニヤニヤしてしまうあたりだが。

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スピルバーグ映画を見ると、毎回映画における「動き」の大切さを改めて感じる。今作も歩く、走る、受け取る、震えるなどのアクションがとても連続的に、映画のドライブ感を生んでるとともに、キャラクターの心情を描き出している。どこで歩みを止めて、どこで動き出すか。これほどスマートで映像的な「進む/進まない」の葛藤の描写が他にあるか。そして、とびきり素晴らしいのは印刷機の動き出し。スピルバーグ映画お馴染みの「振動」もしっかり登場し、もう引き返せない巨大なものの動き出しを表している。本作における印刷機は「ジュラシック・パーク」のTレックスと同様なのだ。画面に映っているものの動きを見ているだけで、何が起きていて、登場人物が何を思っているのかが分かる。これを映画的と言わず何と呼ぶのだろう。久々に「映画」を感じた。