movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【ドラマレビュー】『ハンド・メイズ・テイル/侍女の物語』

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Huluで毎週ちまちま更新されやっと見れた全10話。いやぁ、喰らった。昨年のエミー賞を総なめにしたのも納得の、リアルタイム性と普遍性を兼ね備えるフィクションとしての面白さだ。10時間ですら、この作品が描き出そうとしてる壮大な世界のほんの一部しか見えてない感がある。この10時間で描かれるのは、あくまで変化の予感と物語の始まりなのだ。

 

現代のmee to運動を始めとする、いわゆるポリティカリコレクトネスと世界のムーブメントを反映させた企画、作品だったのは間違いないが、それ以上にこの作品の普遍性、クラシック的な風格の方に感動した。そもそも、マーガレット・アトウッドの原作が1985年のものなので、原作由来の部分なのかもしれないが。未読だからなんとも言えない。

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この作品で描かれるのは、所謂ディストピアと言っても過言ではない「未来」だ。世界はカルト宗教組織に支配され、昔のような遊びもショッピングもテーマパークもSNSもない世界。そして、その世界では、子供を産むために女性は虐げられ、「儀式」という明らかに倫理的な線を超えているイベントによって心身ともに削られていく。当然ジェンダーに対しての理解もなく、LGBTや感情による性交渉は即刻罰せられ、理不尽に身体と命を奪われる。そんな理不尽な世界観を徹底的に描くと同時に、なぜこのような世界になってしまったのかが、前半に登場人物たちの回想カットバックによって、同時進行的に語られる。ここの演出の手際の良さも流石だが、普段の日常が小さな違和感から徐々に崩れていき、予感が本物になり、ディストピアになっていく過程が物凄くリアルで恐ろしいのだ。その部分での白眉となるのは第3話のデモ行進が制圧されるまでの一連の流れだろう。クレジットカードが使えなくなるという些細なところから警官隊が一般市民に向けて発砲してくるというショッキングまで、じわじわ煮詰めていき、世界を崩していく感覚が、正に我々の住んでる世界でこのようなことがもしもあったらという”if”の話として容易に想像がついてしまうのが恐ろしい。現代のファンタジーでは全くなく、紛れもなくこの世界の話をしているのだと。

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音楽の使い方にも注目したい。第1話と第2話のエンディングを飾るのは、レスリー・ゴア「You Don’t Own me」と「ブレックファストクラブ」でおなじみシンプル・マインズ「Don't you 」とあまりに有名な二曲。前者は女性の目線から所有物からの脱却を歌い上げ、後者は男の目線だが、大切な人に来て欲しい、忘れないで欲しいという願望を歌っている。前者のメッセージ性は言わずもがな、後者のような青春のポップソングのような曲も、今作は皮肉な響きを表す。

Slow change may pull us apart   

緩やかな変化が ぼくらを引き離すだろう 
When the light gets into your heart, baby   

きみの心に 灯りがともる時に、ベイビィ

この歌詞が響くラストの展開は、あまり後味は良くないが秀逸だ。皮肉の効きようと、このスタートの2話と2曲で主人公を完全に檻に閉じ込めるのだ。

 

あと、個人的に今作のベストエピソードでもある第7話のシガレッツ・アフター・セックスの使い方も痺れた。「Nothing’s gonna hurt you baby」。正にそんな状態から少しでも救われた彼の最後の表情に途轍もなく感動した。全体としても、「ストレンジャーシングス 」S2における「姉妹の契り」というエピソードのような脱線回であったが、絶望の中にも幸せな瞬間と人間の強さ、そしてそれを束ねるような微かな希望に、今年見たドラマでも最も胸が熱くなるエピソードだった。

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勿論最終話の抵抗とニーナ・シモンにも打ちのめされた。そしてこの、言葉じゃない行動による訴えは正に映像作品にする意義があっただろう。言葉にするところとしないところの誠実さとセンスに本当に感動する。唯一苦言を呈するのだったら、やはり日本での配信の遅さだろう。Netflixamazonなど、本国とほぼ重要作品がリアルタイムに見れるこのご時世で、昨年の超重要作品である本作をリアルタイムで見れないのはあまりにも辛い。こうなるとS2も不安になるわけだが、本国では今月末から始まるということで、流石に年内の配信を望みたい。この物語の続きを早く見たい。