movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【映画レビュー】『レディ・プレイヤー1』

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今年は個人的に映画の当たり年だと思っているが、また大傑作だ。スピルバーグ作品が1ヶ月以内に2作品も公開されるという異常事態に遭遇でき、そしてそのうちの一本が今作だった喜びを噛み締めたい。2018年にスピルバーグが焼き付けた集大成は、ポップカルチャーネタの数々にもとても楽しい気分になるが、一部のマニアの人に向けた安易な目配せに終始する映画ではなく、それどころかとても普遍的で、お話自体はどの時代でも通づるような継承の物語だった。今作はその普遍性こそが最もスペクタクルであり感動的な作品だ。

 

※以下ネタバレを含みます。

 

 

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まずは冒頭から驚かされる。仮想空間の作り込みも勿論すごいが、現実世界のコロンバスの風景から手抜かりがない。このようなディストピア世界描写は様々な映画で見たような気になっているが、スピルバーグは全く新しい形でそのディストピアを提示して見せた。ありそうでなかったディテールと、それを手際よく見せていくオープニングから引き込まれる。この「未来」をしっかり描けてるかどうかは、このようなストーリーの映画では最も重要といってもいいだろう。それをスピルバーグは難なく高いレベルでフレッシュなものを見せてしまったのである。

そのほかの前半のアクションも素晴らしい。複雑さに反して、信じられないくらい見やすいレースシーンがとても計算されていてよかった。このレースシーンの音楽を全くかけない演出がそれぞれの怪獣や車のクラッシュなどの「音」だけを信頼した作りでとても迫力があった。一つ一つの要素のフレッシュさが、単なるノスタルジーでは終わらない、2018年のスピルバーグでしかありえなかった作品になりえている部分であると思う。

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安易なファンサービスや目配せではない、純物語的な普遍性を込めたプロットにはストレートに感動させられた。この映画のアドベンチャーは1人の男の人生を辿っていく旅だ。創設者のハリデーの人生を遡っていきゴールまでの鍵を手に入れていく。その彼の人生というのが、いわゆる天才が故の苦悩などではなく、失恋や親友とのいざこざ(ここでのハリデーとモローは明らかにジョブズとウォズニアックだ)という、現実世界を生きる我々も経験した、あるいは経験するであろうごく普通の物語だ。ごく普通の1人の男の人生を通じて、現実の世界の人生に触れていく。ここがとてもグッとくる。この冒険のゴールとなる最後の部屋は、自分の始まりというハリデー自身の子供時代の部屋の中だ。そこにいるのはテレビゲームをしている普通の少年。正にハリデーこそ我々自身、所謂「俺たち」なのだ。マーク・ライランスが見せる最後の表情に様々な含みを感じて泣ける。そしてそんな彼の人生の積み重ねである「オアシス」が、エッグとなって新しい世代に受け継がれていく。とてもわかりやすい継承だ。全ての瞬間こそが大事なのだと新しい世代に受け継がれその意味を知るという、そしてそれをスピルバーグが描いたというメッセージ性の強さに感動する。

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それに対する悪役である、ベン・メンデルソーンのキャラクターも素晴らしい。明らかにハリデーと対になるキャラクターとして、人としての部分が完全に欠落した冷酷な悪役だが、終盤、エッグを見て一瞬感動する彼にこちらも感動する。ここのベン・メンデルソーンの演技がものすごくいいのだが、ここで、コーヒーを注いでた時の彼の姿が一瞬戻るあたり、スピルバーグはとても優しい作家だと改めて思う。と思いながらも、主人公の叔母を容赦なく殺すあたり、やはり毒の強い監督だとも思ったり。

これらのクライマックス周辺は完璧の一言だ。仮想空間と現実をカットバックさせながらどちらにも盛り上がりを見せようとするあたり、流石すぎる。現実世界でのカーチェイスや銃によるサスペンスも絶妙なバランスで成り立っており、永遠に見ていたい高揚感があった。

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そして、最も感動したのはラスト。今の時代ではくどいくらいの大団円だが、これこそ唯一80年代アンブリン映画っぽさを感じた場面だ。ここのシークエンスの、エモに頼らない感動は今時なかなか味わえない。その中の主人公とヒロインのキスシーンも素晴らしかった。主人公とヒロインを結ぶハイライトがキスというのも今時珍しいくらいだと思うが、このベタなロマンスにも泣いてしまうのだ。キスはハリデーが人生でやり残したことの一つだ。それをも正に主人公が受け継ぎヒロインとやり遂げるのである。しかも、現実世界でも少し宙に浮かんで。このシークエンスが本当に素晴らしくロマンティックだ。

何度も言うが、この映画は特別な人、ある特定の人へ向けたお話ではない。今まで現実以外の何かに没入したことのある人全てに向けた物語なのだ。非現実が必要な我々を肯定しながら、見終わった後には現実世界が特別なものに様変わりするような作品だ。そして、この作品をスピルバーグが監督した意義を噛み締めたい。

私のゲームで遊んでくれてありがとう

ハリデーの言うこの台詞はスピルバーグから観客への40年分の言葉にも思える。これも全て含め、正しくポップカルチャーが一つの到達点を迎えた歴史的作品だ。2018年、まだまだ更新し続ける。