movie_99’s diary

映画や音楽やらの感想をぼちぼちと。

【映画レビュー】『モリーズ・ゲーム』

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試写で拝見させてもらった。何よりも『マネー・ボール』『ソーシャル・ネットワーク』『スティーブ・ジョブズ』の天才アーロン・ソーキンの監督デビュー作。期待値をかなりあげて見たが、監督としても将来有望であることが、証明された作品となっただろう。それこそまだ、過剰な感傷的でチャラついた映像は賛否分かれるだろうし、演出の詰めが甘い部分もあるにはあるが、これは純粋に誰が見ても楽しいエンターテイメントであると断言できる。

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思い返してみるとやはり脚本の映画だったとは思う。とにかく秀逸というほかない、鮮やかすぎる台詞劇だ。目まぐるしいほどの言葉と情報の量に頭がクラクラしてくるが、一瞬も途切れることのないテンポと、ハイレベルながらも洒落の効いたセリフで2時間半飽きることなく見続けられる。そして紛れもなくアーロン・ソーキンの脚本だ。セリフの中に、この映画自体の構造を説明させ、主人公の周りの人物も主人公と対になるような形で掘り下げる。あと、彼はほんとうに『市民ケーン』が好きらしい。今までの実話ものはどれも『市民ケーン』要素があったが、今回はより明確な"バラの蕾"的仕掛けがあり、それはラストカットを飾る。自身の監督作で自分の持ち味や作家性を存分に発揮した作品と言えるだろう。

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そして、そんな脚本に説得力を持たせ支える役者陣もほんとうに素晴らしい。主演のジェシカ・チャンスティンはこのような役はもう十八番というか、相変わらず流石なのだが、助演のイドリス・エルバがほんとうに素晴らしかった。これはポストデンゼル・ワシントンもありえるんじゃないか。娘を抱える父親というポジションが、相対的にヒロインの父親と対比になっていくのだが、そのヒロインの父親を演じたケヴィン・コスナーも渋くて切ない演技で脇をしっかり支える。軽薄なマイケル・セラも良かった。そして、最近の映画に顕著な海外ドラマ界のスターの出演も『ストレンジャー・シングス』のスティーブことジョー・キーリーや『ナイト・オブ・キリング』のビル・キャンプ、さらには『13の理由』のブライアン・ダーシー・ジェームズなど、僅かな尺ながらいろんな人が出ていた。やはり今のハリウッドはドラマも抑えてないと追えきれないということか。

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そして、意外なのはクライマックスだ。こちらが予想してた以上に、エモーショナルな着地にアーロン・ソーキンは見てる側を連れて行く。ここは前述でも指摘したように賛否が分かれるところではあるだろうが、自分はこここそアーロン・ソーキンの演出家としての作家性としてこれから出していく特徴であると思っている。少し『スティーブ・ジョブズ』でも組んでたダニー・ボイルの影響も感じるが、個人的には、主人公の人生を少しでも肯定するラストに甘さを感じながらもグッときてしまった。まさに『ソーシャル・ネットワーク』のラストの裏表に位置するようなラストカットに映る"バラの蕾"。とても切れ味のいい幕引きだった。ソーキンはこれからどんな作品を手がけるのかますます楽しみになる作家になった。次回からは演出家としても要注目の人物だろう。